2020年10月05日(月)
水冷式インバータとは?
インバータは使用時にパワーモジュール(IGBT,IPM,MOSFET)や電解コンデンサ、リアクトルなどが発熱します。 発熱した部品は性能を十分に出せなかったり、破損の恐れがあるため冷却する必要があります。 冷却方式は空気で冷却する空冷式の他、水で冷却する水冷式がありそれぞれにメリット、デメリットがあります。 このページでは水冷式のインバータについてご紹介します。
水冷式インバータとは?
発熱する部品はヒートシンクで冷却しますが、水冷用ヒートシンクを使用したインバータが水冷式インバータです。 一般的なヒートシンクは発生した熱を空気中にできるだけ早く放熱するため、表面積が広くなるように櫛のような形状をしています。 一方、水冷式のヒートシンクはヒートシンク内に水が入るようになっており、冷却水を流して素早く冷却することができます。
水冷式のメリット
大きなメリットは装置の大きさが小さくなることです。空冷式では自然に放熱させるため、早く放熱させるためには大きなヒートシンクが必要になったり、風を送るためのファンが必要になったりします。 水冷式は空冷式に比べて小さなヒートシンクで使用することができるため、インバータ本体の大きさを小さくすることができ、限られたスペースを有効活用することができます。 また、逆に言えば空冷式のインバータと同じサイズのインバータを作成する場合は、空冷式に比べインバータの運転範囲を広く取ることができます。
空冷式ではヒートシンクで空気中に放熱するため室内の温度が上昇し、インバータの使用環境が悪化します。 室内の空気自体が熱くなれば強制空冷を行なってもヒートシンクに熱風をかける事になり、十分に冷却できないため既出の通り部品の性能低下や破損の恐れが出てきます。
水冷式インバータは空気中には熱を放出しないので、熱を持った冷却水を外に出してしまったり、冷却設備を室外にすることで室内の温度上昇を避けることができます。
課題は?
課題としてはインバータの熱を吸収した冷却水(温水)の扱いを考える必要があります。 冷却水を循環させる場合は冷却水を冷却するための設備や「冷却水循環装置(チラー)」を使用します。 循環させずに排水する場合は排水の設備が必要になります。
また、ヒートシンク内に水を流しているのでヒートシンクや配管が腐食したり、水漏れのリスクがあります。
他の冷却方式との違いは?
冷却する方式には水冷式の他、空気を使用して冷却する空冷方式があり、空冷方式には自然に放熱させる「自然空冷」、ファンを使用して放熱する「強制空冷」の 2 種類に分かれます。
自然空冷はヒートシンクのみで放熱するため、多くの熱を発生する場合はヒートシンクの面積を広く取る必要があり、インバータ本体が大きくなる場合があります。 強制空冷ではファンを使用して冷却するため、自然空冷に比べてヒートシンクの大きさを小さくすることができますが、ファンが埃を吸う事により冷却能力の低下を招いたり、装置の容量と比例してファンも大きくなるため騒音が発生する場合があります。
水冷方式は冷却水を循環させる設備が必要ですが、インバータ本体を小さくすることができます。
この他に冷却媒体として水以外(油など)を使用する場合もありますが、本ページでの説明は割愛します。
水冷 | 自然空冷 | 強制空冷 | |
---|---|---|---|
冷却の方法 | ヒートシンク内に冷却水を流し放熱 | ヒートシンクのみで冷却 | ヒートシンクにファンで送風して冷却 |
容積 | ◎ | × | △ |
静音性 | 〇 | 〇 | × |
価格 | △ | 〇 | △ |
どんな時に良い? | 大容量でスペースを抑えたい | 小容量で安価に抑えたい | 中容量程度までで安価に抑えたい |
既に持っている空冷式のインバータは水冷式に改造できる?
水冷式のインバータの方が冷却能力が高いため、既に空冷式のインバータがある場合は水冷式に改造することによって性能アップが図れるように感じますが、
- 内部配線の許容電流
- ヒートシンクの変更
- 冷却水のための配管
などが様々な課題があり、安易に改造することができません。
水冷式インバータを使用したい場合は水冷インバータを新たに製作するもしくは購入するほうがおすすめです。
インバータ導入で失敗しないために
最適なインバータを選ぶには電気的仕様の他にも使用環境や所有している設備なども考慮しながら選定する必要があります。 仕様や配置スペースの問題、納入までの期間など、優先順位をつけてプロに相談しながら選定を進めると良いでしょう。 Myway プラスでは 1k ~ 340kVA の空冷インバータの他、水冷インバータも用意しています。 どうぞお気軽にご相談ください。