2016年09月14日(水)
- PSIM Cafe
変圧器の二次電流ひずみはどんな現象? その1
変圧器のコアが磁気飽和すると変圧器の一次側および二次側の電流および二次側の電圧が飽和します。
この現象をシミュレーションで確認して見るため、
PSIMの磁気モデルを使って磁気飽和を考慮できる変圧器のモデルを作ってみました。
できてしまうとそんなに難しいものでもないですが、一から作るのはなかなか大変だと思いますので
ご興味のある方はぜひダウンロードして色々触ってみてください。
PSIMでは電気系のシミュレーションだけでなく
磁気系のシミュレーションも行うことができることをご存知でしょうか?
もちろん電磁解析シミュレータのようにはできませんが、
磁気飽和の影響を考慮した変圧器による電流、電圧の変化ぐらいなら
PSIMだけでシミュレーションすることができます。
磁気モデルの細かい説明は「PSIMで磁気のシミュレーションをする」で行っていますので、
PSIMの磁気モデルについて全く知らない方は 先にこちらをご一読いただくとわかりやすいかと思います。
磁気飽和を考慮した変圧器をモデリングするためには「可飽和コア」を使います。
可飽和コアのB-H曲線を確認するには別途サンプル回路「B-H 3F3.sch」を使って
シミュレーションを実行し、描かれるB-H曲線を調整して可飽和コアのパラメータを決めます。
まずは無負荷の変圧器を磁気モデルでモデリングしてみます。
PSIMのサンプル回路を参考にして可飽和コアの変圧器を作成すると以下のようになります。
巻線2つと可飽和コアですので、こんな感じのイメージです。
無負荷のシミュレーションを行うためには二次側の巻線は開放が望ましいのですが、
PSIMでは巻線の開放はエラーになってしまうので
十分大きな抵抗(ここでは120MΩ)を接続しています。
印加電圧100Vの時の変圧器の一次側端子間電圧Vinと磁束密度B、
励磁電流Imの波形は以下のようになります。
印加電圧は
V=dφ/dt
∫Vdt=φ
φ/S=B
B=S×∫Vdtより
Bに影響を与えます。
印加電圧はコアのB-H曲線に対して小さめで、コアの飽和領域には
あまり入っていないため励磁電流のひずみは比較的目立っていません。
印加電圧を更に上げるとどうなるでしょうか?
150Vを印加してみると波形は以下のようになります。
電圧が大きくなるためBの値も大きくなり、
B-H曲線の飽和領域まで入ってくるので励磁電流にかなりひずみが発生していることがわかります。
では、ここでコアのB-H曲線の特性が励磁電流のひずみにどんな影響があるのかを
確認してみます。
B-H曲線と励磁電流の波形の関係は舞鶴高専の平地先生が書いている
技術メモ「変圧器のBH曲線と励磁電流波形の関係」を参考にするとわかりやすいです。
B-H曲線の幅はヒステリシスを表します。
ヒステリシスが強い場合は電流が増加時と減少時で大きく経路が異なり、
ヒステリシスがなければほぼおなじ経路を通ります。
可飽和コアの「抵抗損失」のパラメータを調整するとヒステリシスの幅が変わります。
先ほどのシミュレーション結果が抵抗損失=0.06(下図左)に対し、
抵抗損失=0.6m(下図右)に変えてシミュレーションを行いました。
抵抗損失がほとんどない場合、ヒステリシスはほとんどないといえます。
このコアで150Vを印加してシミュレーションを行うと
以下のような波形になり、ヒステリシスがないコアの場合は励磁電流のひずみが
左右対称の波形になることがわかります。
少し長くなったのでここまでにして、次の記事で漏れ磁束の影響と二次側の電流について書きます。
この記事で作成した回路は下記からダウンロードできますので
ぜひシミュレーションして見てください。
※Ver.10.0.4以上の製品版・トライアル版で動作が可能です。
タイムステップを細かく取る必要があるため、デモ版では同じ波形を表示することができません。
この記事の回路ファイルのダウンロードはこちらから