2021年02月05日(金)
ロバスト設計とは?
ロバスト設計とはその名の通り、robustness(堅牢、強固)な設計をする事を指します。
ここではパワエレ分野におけるロバスト設計について解説をします。
ロバスト設計とは?
ロバスト設計とは、様々な要因や誤差(ばらつき)などを考慮し安定した性能や品質の製品を作り上げるための設計手法です。
その様にして、性能に悪影響を及ぼす可能性がある要因を最終製品から排除します。
設計段階ではうまくいっている様に見えて、実機を製造し試験をしたら問題が露見した、
あるいは市場に出した後に不具合が発生してしまうケースなど、
後工程であればあるほど、問題が起こった際には納期やコストに大幅に影響が出てしまうものです。
それらを前工程で可能な限り洗い出し、リスク要因として回避するための思想を設計の中に取り込む事により
「robustness」な製品を製造する事。
これがロバスト設計と言われる開発/設計手法となります。
パワエレにおける「リスク要因」とは?
それでは実際のパワエレ機器における設計段階で考慮をすべきリスク要因とはどの様なものがあるでしょうか。
●部品や材料などによる誤差(ばらつき)
●温度(部品、雰囲気)や湿度、標高(気圧)といった環境
●配線や基板パターンなどの抵抗/浮遊容量/浮遊インダクタンス
●ノイズ
●人為的なミス(設計不良、製造/実装不良、配線ミス)
●etc
失敗例①温度による部品誤差を考慮せずに設計し、装置が正常動作しない。
失敗例②配線を考慮せずに設計し、制御が安定しない、思ったような性能が出ない。
失敗例③ノイズによる誤動作で装置が破損してしまった。
ロバスト設計を行うメリット
市場不具合が発生してしまうと
回収費、暫定対策費、恒久対策費、関わる人員のコスト、機会損失(本来やるべき仕事が止まる)、信頼の失墜が発生してしまいます。
心配であるため、マージンを持って設計を行う。十分な検討がなされない場合、オーバースペックになりがちです。
それらの見えないリスクが原価上昇=販売価格の上昇にも繋がり競争力も落ちてしまいます。
起こりえるリスクを排除し、または対策を施す事で不要なコストを削減し、
高品質/安全な製品でお客様からの信頼を得る事ができます。
ロバスト設計をするには?
前工程で可能な限り洗い出したリスク要因を検証し、対策を施す事が必要です。
特に、ものが出来上がる前のまさに「設計」が重要となります。
パワエレ分野では「シミュレータ(モデルベース開発)」を使います。
シミュレータを使い電気の流れやシステムの挙動を波形データとして可視化します。
下記の通り、仮説と検証、対策を繰り返し行い、実機を製造する前に堅牢な製品を設計します。
●ばらつきや各種リスク要因を取り入れて解析/検証
●対策(部品交換などの設計変更、ソフトウェアによるフェールセーフ)
最適なシミュレータは?
シミュレータといっても、多くの種類があります。
シミュレータを選ぶコツとしては4つが上げられます。
①必要としている結果が得られるか
例えば半導体やモータなどの詳細モデルが利用出来るかなど
シミュレーションの精度は重要となってきます。
一方、そこまで精度がいらない解析もあります(システム的な動作など)。
シミュレータを選ぶ前に、何を見たいのかが大きなポイントにもなってきます。
②演算/解析時間は早いか、収束性は良いか
同じ計算をするにしても、早い方が断然に良いです。
しかし、一般的にはモデルが詳細になればなる程、遅くなる傾向があります。
そのため、①にも関連しますが得たい結果に合わせたシミュレータを選択した方が効率も良いです。
また、収束性の高さも重要となります。
数時間掛けて行った解析が発散をして結果が得られなかった、、、よく聞く課題です。
解析をいかに早く回すかが、納期短縮と品質向上に繋がります。
③操作は簡単か、必要な解析機能はあるか
ロバスト設計を行うには、様々なリスク要因を取り入れて複雑なパターンを組んで検証が必要です。
例えば、部品の定数値を±10%の精度で1%刻みで毎回手打ちで入力して計算する、、、
また部品の数が増えればその試験パターンは膨大です。
特定の値から値までを自動で変化させて検証するパラメータスイープはもちろんの事、
ランダムに値を選択し検証をするモンテカルロ解析や、
パレート分析など、検証を手助けしてくれる機能があれば検証の効率化が出来ます。
④費用対効果はあるのか
パワエレ機器は移動体やインフラ、家電から実験用の装置など様々なシーンで組み込まれており、
トラブルによる影響度も大小様々です。
ただ共通して言えるのは、回路検証となる設計/開発にのみ焦点を充てるだけではなく、
故障モードの解析や納品後のトラブル(例えば現場ならではの接続される環境の課題。系統電源の高調波など)の解析などを含めて
後戻りのリスクをいかに回避するか、あるいは実機では再現し辛い現象を解析するなど
シミュレーションならではのメリットも考慮して採用を検討するとより効果が高まります。
最後に
ロバスト設計=シミュレータを活用と伝えてきましたが、
一番重要なのは利用者本人です。
シミュレータで出来る事、出来ない事を認識し、
求める結果に対する適切な条件設定やモデリングが必要です。
予想外の結果が出た時には、そこにある課題に気付くかどうかも
まさに「ロバスト設計」なのではないでしょうか。
Mywayプラスでは様々なシミュレータを用意しています。
最適なシミュレータをご選択の上、開発の加速化と品質向上に繋げて頂ければ望外です。
●理想スイッチング素子による高速シミュレーション
●バッテリやモータを含めたパワエレシステムシミュレーション
●理想モデルだけではなく、スイッチング素子の詳細モデル解析が高い収束性を持って実行可能
●バッテリやモータだけではなく、ギアなどの機械要素も含めたマルチドメインシミュレーション
●故障モードの解析や最適化、モンテカルロ解析やパレート分析といったロバスト設計が可能
■パワエレコントローラ用デバッグツール(HILS) Typhoon HIL
●電源やモータなどの負荷、計測器といった実験環境を模擬するリアルタイムシミュレータ
●高速動作により、インバータやコンバータといったパワエレ機器を模擬可能
●パワエレ開発者が一人で扱えるHILS