2016年07月26日(火)
- PSIM Cafe
PSIMで磁気のシミュレーションをする
PSIMは電気回路のシミュレータですが、簡単な磁気のシミュレーションも扱うことができます。
変圧器やリアクトルはPSIMにもモデルが用意されていますが、
用意されたモデルとは異なる、特殊なモデルをシミュレーションする場合や
磁気飽和などを考慮したシミュレーションを行う際には
磁気モデルをモデリングするとシミュレーションができます。
ここでは簡単に磁気モデルについてご紹介します。
磁気モデルは以下のモデルを組み合わせてモデリングします。
・巻線
・漏れ通路
・エアギャップ
・エアギャップ(AL)
・線形コア
・可飽和コア
■巻線
電気系の回路と磁気系の回路のインターフェースになる素子です。
コイルの両端に電気系の回路を接続し、抵抗のような四角の両端から磁路が出ると考えるとわかりやすいです。
■漏れ通路
日本語だといまいちな訳だと思いますが、
漏れ磁束が通る経路だと考えるとわかりやすいと思います。
■エアギャップ
エアギャップはそのままですね。ギャップのモデルです。
■エアギャップ(AL)
これは役割も見た目も上記のエアギャップと同じですが、
入力するパラメータの定義方法が異なります。
■線形コア
これもいわゆるコアです。B-Hを持たないので、磁気飽和は考慮できません。
■可飽和コア
こちらはB-Hを入力でき、磁気飽和を考慮したシミュレーションを行うことができます。
磁気モデルを使う上で知っておく必要があるパラメータとして
インダクタンスファクターALというパラメータがあります。
あまり聞き慣れないと思いますが、これは磁気抵抗の逆数、パーミアンスのことです。
一例として磁気モデルを使ってインダクタンスをモデリングしてみます。
PSIMのサンプル回路には巻線、エアギャップ、可飽和コアを使って
インダクタンスのモデリングをした回路がありますが、
もっと簡単に巻線とコアだけで作りました。
黄色で囲まれている部分がインダクタンスです。
降圧チョッパのインダクタンスをPSIMが元々持っているインダクタンスと
磁気モデルで作ったインダクタンスの結果が同じになるか確認してみます。
磁気モデルを使うときに便利な機能としてパラメータファイルの機能を使います。
パラメータファイルの機能の詳細はこちら(素子のパラメータを外部で定義する)をご参照ください。
巻線とコアのパラメータには変数を定義しておきます。
巻線の巻き数はN、巻線抵抗はRとします。
コアのインダクタンスファクターはALとします。
パラメータファイルにN、R、ALの値を記載します。
今は下記のように設定しました。
巻線の巻数Nは今は何でも良いので10、
巻線抵抗はPSIMが元々持っているインダクタンスは理想モデルのため
巻線抵抗はないので0にしたいのですが、0は入力できないので0.1nを入力しました。
ALは色々計算すると
AL=L/N^2
となります。
今、Lは回路のインダクタス4.2uHと同じ値にしたいので
上記のように入力しました。
このように数式で入れられて、一括して入力値を見ることができるので
パラメータファイルはとても便利です。
この回路を実行して電流、電圧を比較しました。
電流も電圧も波形がぴったり一致し、磁気モデルで4.2uHのインダクタンスが
モデリングできていることがわかります。
この記事で使用した回路は以下からダウンロードできますので、ぜひ色々動かしてみてください。
※Ver.10.0.4以上のPSIMで動作が可能です。
この記事の回路ファイルのダウンロードはこちらから